結論:CTIが選定主軸になるかどうかは「形状制約」で決まる
材料の耐トラッキング性指標であるCTI値(および UL 製品認証での区分値 PLC)が部品選定で支配的に効くかどうかは、その部品の形状制約によって沿面距離(絶縁体の表面に沿って測った導電部間の最短距離)をどこまで設計で稼げるかで決まります。
イメージとして「狭い部屋」と「広い部屋」を思い浮かべてください。狭い部屋の中では、人と人の距離を自然に確保するのは難しく、壁や仕切りの素材そのものの性質に頼らざるを得ません。広い部屋なら、配置を工夫するだけで距離を取れます。コネクタや端子台と筐体・カバーの関係は、この「狭い部屋と広い部屋」の違いに近いものがあります。
コネクタや端子台のように構造上のスペースが限られた部品では、沿面距離を設計で伸ばすことに限界があり、材料のCTI値を上げて「同じ沿面距離でも絶縁要件を満たせる」方向に頼らざるを得ません。一方、筐体やカバーのように形状自由度が高い部品では、沿面距離を十分に取れる設計変更で対応できるケースが多く、材料CTIへの依存度は相対的に低くなります。
必要なCTI値の絶対水準は、動作電圧と汚損度(部品が置かれる環境の汚れや湿気の度合いを示すクラス区分)の組み合わせで決まります。この2つの軸—形状制約と電圧・汚損度—を最初に確認することで、材料選定の方向性が大きく絞り込めます。
この記事ではCTI値・PLCの試験・区分の読み方と、部品タイプ別のCTI依存度の整理を提供します。CTI定義・沿面距離の基礎・両軸の全体像については 材料特性と設計の関係を整理した記事 を先に参照してください。
CTI値とPTI:IEC 60112が測るもの
IEC 60112による評価の仕組み
CTI(Comparative Tracking Index:比較トラッキング指数)は IEC 60112 が規定する試験で求められます。試験の流れを端的に言えば、電極間に試験液(通常は塩化アンモニウム水溶液)を30秒ごとに1滴ずつ、合計50滴滴下し、その条件下でトラッキング破壊(絶縁体表面に炭化した導電路が形成されて絶縁が破れる現象)も持続炎も生じなかった最大電圧値(V)がCTIです。試験電圧は25Vの整数倍で設定され、5個の試験片すべてが耐えた電圧の最大値を採用します。
CTIとPTIは判定ロジックが根本的に違う
同じ IEC 60112 を基礎とする指標にPTI(Proof Tracking Index:証明トラッキング指数)があります。両者の差は「何を目的とした試験か」にあります。CTIが「どこまで耐えられるかを探索する」指標(最大耐電圧の探索型)であるのに対し、PTIは「指定した電圧で耐えられるかを証明する」指標(合否の証明型)です。同一の試験装置・滴下条件を使いながら判定の組み立てが異なるため、別指標として扱う必要があります。
CTI値は沿面距離を直接決める数字ではない
IEC 60112 自体が、CTI/PTI 結果は「安全な沿面距離の直接評価には適さない」と明記しています。CTI値は IEC 60664-1 の設計体系と組み合わせて初めて沿面距離設計に生きる材料分類指標であり、CTI値が高ければ自動的に安全という単純な話ではありません。
PLCとmaterial group:2つの区分体系を読み分ける
UL 746AのPLC(6段階区分)
UL 746A が定める PLC(Comparative Tracking Index Category)は、CTI値を6段階に分類したものです。PLC 0はCTI 600V以上、PLC 1は400〜599V、PLC 2は250〜399V、PLC 3は175〜249V、PLC 4は100〜174V、PLC 5は100V未満です。数字が小さいほど耐トラッキング性が高く、UL認証の材料性能区分として機能します。
IEC 60664-1のmaterial group(4段階区分)
IEC 60664-1 は沿面距離の設計要求値を算出するため、CTI値に基づく4段階の material group を定義しています。Group IはCTI 600V以上、Group IIは400V以上600V未満、Group IIIaは175V以上400V未満、Group IIIbは100V以上175V未満です。material group が高いほど(CTIが高いほど)、同じ電圧・汚損度条件での要求沿面距離が短くなる設計体系になっています。
なぜPLCとmaterial groupは1:1で置換できないか
概念的には対応しているように見えますが、電圧区分の境界が一致しない箇所があります。たとえば PLC 3 は175〜249Vであり、IEC 60664-1 の material group IIIa(175〜399V)の下位部分にしか対応しません。IIIaの全域をカバーするには PLC 2(250〜399V)と PLC 3 の両方が必要です。こうした境界のずれがあるため、「PLC XX = material group YY」と単純に置き換えることは誤りになります。
実務上の整理として、UL認証向けの文書ではPLCを使い、IEC規格に基づく沿面距離設計ではmaterial groupを使う、という使い分けが必要です。
IEC 60112とUL 746A:試験の非互換と数値の読み方
IEC 60112 と UL 746A(実務上はASTM D3638系のCTI値をULのPLC区分として扱う運用)は、試験装置や基本的な評価思想に共通点があります。一方で、規格体系・判定条件・報告方法・区分化の考え方が同一ではないため、IEC系のCTI値とUL系のPLCをそのまま相互換算することはできません。
IEC法の値が低めに出ることがある、という傾向は実務上報告されていますが、これは全材料に一律適用できる法則ではありません。
グローバル展開する材料では両規格の試験値を取得・併記するケースがあります。特に自動車や産業向けの高電圧部品では、両規格に対応した値の開示が前提になる場面も増えています。一方で、北米市場向けにUL認証のみを取得する場合はPLCで完結し、IEC 60112の正式CTI値が公表されないこともあります。
データシート表記3パターンの見分け方
材料データシートやUL公開認証情報(Yellow Card等)の電気特性欄には、次の3つの表記パターンが存在します。CTI値のみの記載(例:”CTI: 600 V (IEC 60112)”)、PLCのみの記載(例:”PLC: 0″)、CTI値とPLCの両方を併記(例:”CTI: 600 V / PLC: 0″)、の3種類です。
IEC 60664-1 に基づく沿面距離設計を行う場合はmaterial groupへの変換が必要なため、CTI値(またはmaterial groupの直接記載)を持つデータシートを手元に用意することが原則です。PLCのみのデータシートを見ている場合は、上の区分表を参照しつつ「おおよそgroupいくつ相当か」を把握したうえで、設計値の確定は適用規格に基づいて行います。
形状制約×電圧・汚損度で見るCTI依存度

図1は部品の形状制約(縦軸)と動作電圧×汚損度(横軸)の2軸で、代表部品を配置したものです。右上の領域—形状制約が大きく、かつ高電圧×高汚損の組み合わせ—では材料CTIが選定を支配します。左下の領域—形状自由度が高く、低電圧×低汚損—では設計で沿面距離を確保する対応が一般的です。
形状制約が大きい部品でCTIが選定主軸になる理由
IEC 60664-1 の設計体系では、material groupが高いほど(CTIが高いほど)要求される沿面距離が短くなります。コネクタや端子台のように形状制約があって沿面距離を延ばしにくい部品では、材料のCTI値を上げることが設計上の有効な手段になるわけです。
産業用端子台・PCBコネクタの代表的メーカーである Phoenix Contact や Weidmüller の主力製品データシートでは、material group I / CTI ≥ 600 の採用例が広く確認できます。
主要エンプラメーカーの公式用途提案では、EVバスバーカバー(高電圧・大電流が流れる導体の絶縁保護カバー)向けにはCTI 600V級のエンプラ難燃グレードが推奨される一方、同じEV用途でも車載バッテリー用コネクタ向けにはPLC 2(CTI 250〜399V相当)クラスの公式適用例も存在します。EV高電圧部品といっても「一律CTI 600V以上」とは断定できず、部品の役割・OEM規格・絶縁協調条件によって必要水準が異なります。
形状自由度が高い部品でCTI依存度が下がる理由

図2はコネクタ(材料CTIで補う)と筐体(沿面距離設計で対応)の役割分担を概念的に示したものです。CTI値と沿面距離は互いに代替できる関係ではなく、部品タイプによって重みの異なる補完関係にあります。
筐体・カバーのように形状を自由に設計できる部品では、要求沿面距離をより長く取ることでmaterial groupの低い材料(CTI値が相対的に低い材料)でも絶縁要件を満たせます。IEC 60664-1 の設計体系が「CTI×沿面距離」の組み合わせで要件を満たす仕組みを持っているためです。冒頭の「広い部屋」のたとえに戻れば、部屋の配置(沿面距離設計)で距離を確保できるため、壁の素材(材料CTI)への依存度が下がるということです。
ただし、高電圧部品周辺のカバーや高汚損環境に置かれた外装部品は例外です。アセンブリ後の最小沿面距離経路を確認し、必要に応じて材料CTIの要求水準を見直す必要があります。
低〜中電圧の家電コネクタやE&E用途では、汚損度クラスと動作電圧が低い条件に限り、material group IIIa相当(CTI ≥ 175V)が絶縁要件を満たす場合があります。これは「IIIaで常に十分」という意味ではなく、適用規格・汚損度・動作電圧を先に特定したうえでIEC 60664-1のマトリクスに照らし合わせる作業が前提です。
代表材料カテゴリのCTI傾向
材料のCTI値を語るとき、ベース樹脂の種類(PA66かPBTか)よりも、そのグレードにどのような添加剤やフィラーが入っているかのほうが値への影響が大きくなる場合があります。フィラー処方の詳細については コンパウンドの基本を整理した記事 を参照してください。
PA66(未強化グレード)ではCTI 600V級に入る例が複数あります。同じPA66でもGF15〜30強化グレードでは450〜550V台に下がる例が多く見られ、BASF Ultramid® AシリーズのデータシートがこのGF強化によるCTI低下の傾向を示しています。
PBTではグレードによってCTI値の幅が大きく出ます。Celanese の Celanex® シリーズを例に挙げると、未強化・非難燃グレードのCTI 600V超に対し、未強化の難燃グレードでは250〜325V台、GF強化の難燃グレードでも250〜330V台に下がる例が公開データシートから確認できます。
ただし、難燃剤の系統によってCTIへの影響は大きく異なります。一般に、臭素系+三酸化アンチモン系などのハロゲン系難燃剤を用いたV-0グレードはCTIが下がりやすい傾向にあり、リン系などのノンハロゲン系難燃剤を用いたV-0グレードは高いCTIを示しやすい設計が可能です。複数の主要エンプラメーカーの製品案内でも、PA66 GF25〜30難燃グレードでIEC 60112によるCTI 600V・PLC 0を明示する事例が確認できます。「難燃GF強化ではCTIが下がる」は難燃剤系統による傾向情報であり、高CTIと難燃性の両立を求められる用途では、ノンハロゲン系難燃グレードが有力な選択肢になります。
実際の設計では、データシート値はあくまで出発点です。成形条件・表面状態・ウェルドラインの位置によって完成部品の値が変動するため、最終部品での実測確認が原則になります。
自動車の高電圧化に伴い、CTIの600V上限を超える領域を補完する評価として、UL 2597のSTT(Surface Tracking Test)も登場しています。STTは600〜900V級のEV・輸送用途に向けた材料比較・選定を補完する試験ですが、IEC 60664-1に基づく沿面距離設計を置き換えるものではありません。現時点では、高電圧化に伴う新しい評価動向として押さえる程度に留めるのが安全です。
用途別の選定早見表
以下のDecision Cardは、部品の形状制約と動作電圧×汚損度の組み合わせに基づき、材料CTIへの依存度と選定の起点を整理したものです。IEC 60664-1の設計体系および各社の公表データをもとに構成しています。
EV高電圧バスバーカバー・絶縁ハウジング
- 条件
- 動作電圧600V以上、高汚損、形状制約大(コンパクト設計が必要)
- 推奨(根拠)
- CTI 600V / material group I 相当を選定の起点とする。GF強化難燃グレードでも高CTIを維持できる事例(PA66 GF25〜30難燃・CTI 600V品など)が複数社から提供されており、ノンハロゲン系難燃剤を用いたグレードが有力な選択肢になる
- 注意
- 「EV高電圧だからCTI 600V一律」とは断定できない。実際の要求値はOEM規格・絶縁協調条件・汚損度で確認。詳細は「EVモーター絶縁部品における樹脂選定」(記事準備中)および「EVコネクタ・充電ガンにおける樹脂選定」(記事準備中)でも扱う予定です。
産業用端子台・PCBコネクタ(500〜1000V級)
- 条件
- 高電圧・高汚損、端子ピッチが小さく形状制約大
- 推奨(根拠)
- 高電圧・高汚損かつ小ピッチの産業用端子台・PCBコネクタでは、material group I / CTI ≥ 600を選定の起点にすると整理しやすい。Phoenix ContactやWeidmüllerなどの公開データシートでも、group I / CTI 600級の採用例が確認できる。ただし、最終判断はIEC 60664-1等に基づく動作電圧・汚損度・必要沿面距離の確認が前提となる。
- 注意
- 低電圧・低汚損条件の端子台ではgroup IIでも成立する場合がある。適用規格と汚損度クラスを確認してから材料グループを絞ること
家電・低〜中電圧E&Eコネクタ
- 条件
- 動作電圧数十〜数百V、低〜中汚損(汚損度クラス1〜2相当)、形状制約は中程度
- 推奨(根拠)
- material group IIIa以上(CTI ≥ 175V)が絶縁要件を満たす場合がある(SABICのE&E設計指針で要求下限CTI > 175Vと説明されている)。ただし断定ではなく、IEC 60664-1と適用規格で確認が前提
- 注意
- 「IIIaで十分」と早合点せず、実際の汚損度・電圧クラスおよび適用規格を先に特定すること。規格がgroup I以上を直接要求する場合は形状自由度があっても材料CTIが制約になる
電気機器外装筐体・カバー
- 条件
- 形状自由度が大きい、低電圧×低汚損が主な適用範囲
- 推奨(根拠)
- 沿面距離を設計で確保する方針が一般的。CTIより機械強度・難燃性・寸法安定性・外観が選定主軸になることが多い(IEC 60664-1の設計体系上、形状自由度があれば低CTI材でも要求沿面距離を延長して対応できる)
- 注意
- 高電圧部品周辺のカバー・高汚損環境では材料CTIが重要になる例外あり。高電圧部品と同一筐体内に組み込む場合はアセンブリ後の最小沿面距離経路で改めて確認すること
このカードはあくまで方向付けの早見表です。必要CTI値の最終確認は、適用規格と設計レビューに基づいて行ってください。
よくある質問(FAQ)
Q1. CTIが600Vなら、沿面距離は短くしても安全ですか?
CTI 600Vは、材料の耐トラッキング性が高いことを示す重要な指標です。ただし、CTIだけで沿面距離や安全性が決まるわけではありません。実際の沿面距離は、動作電圧、汚損度、過電圧カテゴリ、部品形状、適用規格を組み合わせて判断します。CTIが高い材料を使うと設計自由度は上がりやすくなりますが、最終判断はIEC 60664-1などの絶縁協調の考え方と設計レビューに基づいて行う必要があります。
Q2. CTI、PLC、material groupは同じものですか?
同じ耐トラッキング性に関係する指標ですが、同じものではありません。CTIは比較トラッキング指数として測定される電圧値です。PLCはUL認証で使われるCTI値の区分で、数字が小さいほど耐トラッキング性が高い分類です。material groupはIEC 60664-1で沿面距離設計に使う材料グループです。境界値が完全には一致しないため、PLCとmaterial groupを1対1で単純に置き換えることは避けるべきです。
Q3. コネクタや端子台でCTIが重視されやすいのはなぜですか?
コネクタや端子台は、端子ピッチや外形寸法が限られており、沿面距離を設計で大きく伸ばしにくい部品です。そのため、限られたスペースの中で絶縁要件を満たすには、材料側の耐トラッキング性、つまりCTIやmaterial groupが選定上の重要な要素になります。一方、筐体やカバーのように形状自由度が高い部品では、沿面距離を設計で確保できる場合があり、材料CTIへの依存度は相対的に下がります。
Q4. EV高電圧部品では、必ずCTI 600V以上が必要ですか?
EV高電圧部品でも、一律にCTI 600V以上が必要とは言えません。バスバーカバー、コネクタ、端子台、筐体、絶縁ハウジングでは、形状制約や必要な沿面距離が異なります。高電圧・高汚損・小型化が重なる部品ではCTI 600V級を起点に考えると整理しやすい一方、最終的な必要水準はOEM規格、適用安全規格、動作電圧、汚損度、沿面距離の設計値で確認する必要があります。
Q5. 難燃GF強化グレードでは、CTIは必ず下がりますか?
難燃剤やガラス繊維の配合によってCTIが下がる例はありますが、必ず下がるとは限りません。CTIはベース樹脂だけでなく、難燃剤の系統、フィラー、添加剤、グレード設計によって変わります。臭素系+三酸化アンチモン系などではCTIが下がりやすい傾向がある一方、リン系などのノンハロゲン系難燃剤を用いることで、高CTIと難燃性を両立しやすい設計も可能です。材料選定では、グレードごとのCTI値、PLC、試験規格、用途条件を確認することが重要です。
Q6. IEC 60112のCTI値とUL 746AのPLCは相互換算できますか?
単純な相互換算は避けるべきです。IEC 60112とUL 746Aは、耐トラッキング性という同じ現象に関係しますが、規格体系、判定条件、報告方法、区分化の考え方が同一ではありません。実務では、IEC系の設計ではCTI値やmaterial groupを確認し、UL認証ではPLCを確認するという使い分けが必要です。データシートを見るときも、CTI値だけなのか、PLCだけなのか、両方が併記されているのかを分けて読むことが大切です。
Q7. UL 2597(STT)はCTIや沿面距離設計を置き換える試験ですか?
STTは、高電圧化するEV・輸送用途で、CTIの600V上限を超える領域の材料比較や選定を補完する評価として注目されています。ただし、現時点ではCTIやIEC 60664-1に基づく沿面距離設計を置き換えるものとして扱うより、高電圧領域の材料比較を補助する評価として見るのが安全です。設計判断では、CTI、PLC、material group、沿面距離、適用規格を合わせて確認する必要があります。
まとめ
冒頭の「狭い部屋と広い部屋」のたとえに戻れば、担当部品がどちらの部屋タイプに近いかを見極めることが、CTI選定の最初の一歩です。この記事のポイントを3点に絞ります。
- 「形状制約が先」という優先順位です。担当部品がコネクタや端子台のように形状制約の大きい部品か、筐体・カバーのように形状自由度の高い部品かを最初に確認します。前者では材料CTIが選定主軸になり、後者では設計での沿面距離確保が一般的な対応になります。
- CTI必要水準の決め方です。形状制約を確認したら、次に動作電圧と汚損度クラスを特定し、IEC 60664-1 のmaterial groupと組み合わせて必要CTI水準の目安を導きます。「とりあえずCTI 600V以上」という選定は候補を絞りやすい反面、低電圧×低汚損の用途では過剰品質になる可能性があります。
- データシートの読み分けです。CTI値(IEC 60112)とPLC(UL 746A)は同じ現象を別の制度で分類したものであり、1:1で置換できません。IEC 60664-1に基づく沿面距離設計ではCTI値またはmaterial groupの記載を確認し、UL認証向けではPLCを使う、という使い分けを習慣にすると、仕様書やデータシートを見たときに違いをすぐに説明できるようになります。
いずれの判断も、適用規格を確認したうえで、設計レビューで担当者と相談できる材料を手元に揃えておくことが大切です。EV高電圧コネクタやバスバーカバーへの具体的な材料選定は「EVモーター絶縁部品における樹脂選定」(記事準備中)および「EVコネクタ・充電ガンにおける樹脂選定」(記事準備中)でも扱う予定です。CTI×沿面距離の全体的な考え方に立ち返りたいときは 材料特性と設計の関係を整理した記事 を確認してください。
参考資料
- International Electrotechnical Commission, IEC 60112:2020 – Method for the determination of the proof and the comparative tracking indices of solid insulating materials, IEC, 2020. IEC公式
- International Electrotechnical Commission, IEC 60664-1:2020 – Insulation coordination for equipment within low-voltage supply systems – Part 1: Principles, requirements and tests, IEC, 2020. IEC公式
- UL Standards & Engagement, UL 746A – Standard for Polymeric Materials – Short Term Property Evaluations, UL Standards & Engagement. UL 746A規格ページ / UL公式解説
- Celanese Corporation, Celanex® PBT – Polyester Technical Manual / Short-Term Properties Guide, Celanese Engineering Materials. Celanese公式技術資料
- Asahi Kasei Engineering Plastics, LEONA™ SN series / Materials for connectors with excellent tracking resistance / XYRON™ 644Z for automotive battery peripheral connectors, 旭化成エンプラ総合情報サイト. LEONA SN公式 / コネクタ向け材料・車載バッテリー周辺コネクタ用途提案
- Phoenix Contact GmbH & Co. KG;Weidmüller Interface GmbH & Co. KG, PCB terminal block product data sheets – Technical data / Insulating material group / CTI, 各社公開データシート. Phoenix Contactデータシート / Weidmüllerデータシート
- UL Solutions, UL 2597 Surface Tracking Test (STT) for Transportation Applications, UL Solutions. UL 2597 / STT公式解説 / STT公開解説



